バスターミナルで・・・

うかつにも、バスの中で涙がこみ上げて来て大変だった。バスの中で 泣きそうになるなんて初めてだ。しかも、この年で。いや、年だから涙もろくなったの?

午後帰宅途中、バスターミナルでバスを待っていた。私の前には杖をついた一人のおばあさんがいた。ふと左手を見ると、少し先を片手でキャリーカートを引き、方手で杖をついてやっとのことで歩いて来る、もう一人のおばあさんがいた。こちらの方は80歳代ではないだろうか。かなり大変そうだけど、まさかバスに乗るのだろうか?気になって、ちらっと見ていると、私の前のおばあさんも、心配そうに見ている。キャリーカートのおばあさんは、私たちが立っているそばのベンチに腰を下ろした。座ったということは、まだまだ来ない路線に乗るのだろうと、勝手に思った。私の乗るバスが到着。全部で10人くらい乗っただろうか。私は前の方座席に座り、ふと乗車口を見ると、最後に先ほどのおばあさんが乗ろうとしていたところだった。杖をついてキャリーカートを掴んで・・・。乗れるわけなかった。おばあさんは、「助けてください!」と言った。その声で我に返った。バカな私。なんで、彼女が助けてください、と言わねばならない前に、乗るのを手伝ってあげなかっただろう。

おばあさんのその声を聞いて、一人の若い女性が駆け付けた。私も駈け寄った。一人では昇降台ーというのでしょうか―に登れるようサポートするのは無理だった。昇降台が低いタイプのバスもあるが、たまたまそのバスは旧式のタイプだったのだ。おばあさんは、シルバーシートを指したので、そこへ移動し、大丈夫ですかと声をかけながら、キャリーカートを若い人から受け取った。そのカートの切ない程軽いこと。自分が一瞬ひるんだのは、重かったらどうしようと思ったから。だけど、バカだね、私。やっと歩いているおばあさんの荷物がそんなに重かろうかずもないのに。

バスは発車した。どうしたことだろう、とにかく切なくて切なくて、涙が出そうで困った。実家の母も杖をついている。今年はタクシーで移動している。夫の母も、もうほとんど外出はタクシーか、うちの車。人は老いていく。泣いている場合ではないのに。おばあさんが降りる時、もう一度「助けてください」と言わせてはならないと思って、涙が見えないよう窓の方に顔を向けながら、一方で、ちらちらと斜め後ろのおばあさんを見るという怪しい行動?を取りながら、降りる気配がしたら、ひるまず手伝おうと思って身構えていた(爆)。他の乗客も似たり寄ったりの気持ちだったのではないだろうか。ただ、誰か行くかなと思ったりするのよね(たぶん)。でも、その皆の一瞬のひるみが、おばあさんに」「助けて」と言わせてしまったのだ。私も含め車内の誰もスマートじゃなかったってこと。かっこ悪かった、老人にSOSを言わせるなんて。

おばあさんが立ちあがった。私がたぶん若手?の乗客で近い場所にいたので、当然私が傍に行き、荷物を持ち、運転手さんに待っていてと言い、先に降り、降りてくるおばあさんを手助けした。小柄なおばあさんは、しっかりと私の顔を見て、「ありがとう」と言った。あんた、ここで降りるの?いえ。じゃ、乗って乗って。

帰宅してから、わんわん泣いた。どうしたの、私。言葉で説明できないけれど、とにかくダイレクトに何かを強く感じた出来事だった。